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Y子さん家族とともに魔の山ピラタスに登る(「魔の山」は、その山塊の偉容からBudoriが勝手に名付けた)。ケーブルカーで登るのだが、ケーブルが切れたら真っ逆さまに転がり落ちそうな急斜面である。青い空を背景に、信じられないような角度で地面が見える。しかもこんな急斜面に牛がいるのである。Y子さんのご主人のスイス人Rさんから聞いた話では、夏になると草を食べさせるために牛と一緒に山に登り、夏が終わる頃になると降りてくる牛飼いの事をアルプと言うそうである。その牛飼いがたくさんいる山々なので、アルプスという名前が付いたそうである。
ピラタス頂上で、みなで昼食を食べた後、ひなたぼっこをしながら空を見上げていると、軍用機(戦闘機)が3機、編隊を展開する練習を繰り返しているのが見えた。スイスは強力な軍事国家であり、Y子さんの話では、スイスの山は軍事設備を隠す洞窟が多く掘られていて穴だらけだそうだ。Y子さんがスイス政府が編集したスイス国民必携の「民間防衛」マニュアルを見せてくれた。これは日本語に翻訳されていて、日本の書店で買うことができる。内容を軽く紹介すると、「我が国は美しいが、そうは言っても、その山々や湖に基づく祖国愛を説いただけでは、もはやその説得力はない」、「平和と自由は、一度それが確保されたからと言って、永遠に続くモノではない。スイスは何ら帝国主義的な野心を持たず、領土の制服など夢見るモノでもない。しかし我が国は、その独立を維持し、みずから作った制度を守り続けることを望む。そのために力を尽くすことが我が国当局と国民自身の義務である。中略。国民自身が戦争のショックをこうむる覚悟をしておかなければならない。その心の用意なくして不意打ちを受けると悲劇的な破局を迎えることになってしまう。『我が国で決して戦争はない』と断定するのは軽率であり、結果的に大変な災難をもたらしかねない」、「我々は力の限り平和を欲する。平和を守るためには、我々は全てを捧げる。平和を我々は愛するからである」・・・など、どきっとする文言が続き、ダム破壊に対する対応、スパイ活動や妨害工作に対する心構え、など具体的に戦争の現実が生々しく書かれている。スイス国民は戦争が起こる可能性を現実問題として、日々の生活の一部としている。
下山は、ロープウェイでルツェルンに下りた。市の中心部にある湖の船着き場から、定期船でハーギスビルまで戻った。仮装をした若い女性が多くの友達と一緒に乗っており、船からメッセージの入っていると思われるボトルを湖に投げ、その後、乗客にお金をくれる様お願いしていた。Rさんの話によると、この地域の地元の風習で結婚前の儀式のようなものとのこと(その女性の説明による)。船には中国人(香港)の若い女の子のグループが乗っており、Y子さんの長男のT君がイタリア語をしゃべると知り“Ciao bella”と言い始めた。Rさんに聞くと、”Ciao Bella”は若い男性が街で見かけた女性に声をかける時に使う慣用語だそうである(特にbellaがついた場合)。きっとこの女の子達はイタリアで若い男性に”Ciao bella” と声をたくさんかけられたのだろう。
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